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トリケラトプス展6

トリケラトプス展

ケラトプシア類と言えば、ほとんどの人がトリケラトプスをまず思い浮かべるのではないでしょうか。
トリケラトプスは鼻の上の短い角、そして巨大な2本の目の上の角、
さらに頭の後ろに骨質のフリルをもっています。
これらの特徴は、多くのケラトプシア類に見られる特徴ではありますが、
もう少し詳しくそれぞれのケラトプシア類の特徴を見てみると、非常に多種多様で、
時にはケラトプシア類らしくないものもいることに気づきます。

一般に大きな角をもつケラトプシア類の仲間は、ケラトプス科に含まれる恐竜です。
ケラトプス科は、約8000万年前の白亜紀後期カンパニアンの北アメリカで出現したグループで、
中国から見つかっているシノケラトプスを除き、すべての種が北アメリカから発見されています。

ケラトプス科の系統図

ケラトプス科は、系統分類学的に、
「セントロサウルスとトリケラトプスの最も新しい共通祖先とその子孫」と定義されます。
この系統分類学というのは、従来の分類学のように、「鱗(うろこ)をもっているから
爬虫類、羽毛をもっているから鳥」というように、
ある特定の特徴だけに着目する分類方法ではなく、
体中の特徴を等しく評価して、
特徴の共有関係を元に先祖 ― 子孫 関係を推定する方法です。

鳥類というグループを系統分類学的に見てみると、鳥類は恐竜類に完全に含まれ、
恐竜類は、爬虫類に完全に含まれるため、鳥類は爬虫類であると言えます。
話がそれてしまいましたが、このような系統分類学によって定義される
ケラトプス科の恐竜の共通の特徴を見てみると、ケラトプス科に含まれるすべての種は、
頭骨後方中央に位置する一対の鱗状骨(りんじょうこつ)で構成される
フリルをもつことが分かります。

また、ケラトプシア類(Ceratopsia:cera-角;ops-顏)の名前の由来にもなっている角は、
種類によって大きさが様々で、時には全くなくなってしまっていることもあります。
このケラトプス科はさらに、セントロサウルスの亜科とカスモサウルス亜科とに分けられます。
セントロサウルス亜科は、
「ケラトプス科に含まれる種のうち、トリケラトプスよりもセントロサウルスに近縁な種」、
カスモサウルス亜科は、
「ケラトプス科に含まれる種のうち、セントロサウルスよりもトリケラトプスに近い近縁な種」
と定義されています。

セントロサウルス亜科とカスモサウルス亜科の恐竜の骨格を比較してみると、
セントロサウルス亜科では、鱗状骨が短く、長方形のような形をしており、
フリルの後縁まで伸びていません。
一方、カスモサウルス亜科では、鱗状骨が長く三角形のような形をしており、
フリルの後縁まで伸びているという特徴があります。

ケラトプス科の頭骨図


メキシコのカスモサウルス亜科

コアウイラケラトプス Coahuilaceratops

コアウイラケラトプス


コアウイラケラトプス・マグナケルナは、
後期白亜紀カンパニアンのセロ・デル・パブロ層から見つかっている
カスモサウルス亜科のケラトプシア類で、メキシコから見つかっている
数少ない恐竜のひとつです。

通常、ケラトプス科恐竜の鼻の上の角は鼻骨が上方に成長することによって
形成されますが、この恐竜では、角以外の分野でも鼻骨が肥厚化しています。
この特徴に加え、内鼻孔に特殊な構造が見られることが、この種と近縁の
カスモサウルス亜科のケラトプシア類を区別する特徴となっています。

目の上の角は頑強で、非常に長く発達していたと考えられます。
同じ地層からは、標本が部分的であるため命名はされていないものの、
セントロサウルス亜科、及び別のカスモサウルス亜科の恐竜も報告されており、
今後のさらなる発見によって南方系のケラトプシア類の多様性が明らかに
なることが期待されます。(S.F.)


ユタケラトプス Utahceratops

ユタケラトプス

ユタケラトプス・ゲッティアイは、その名が示す通り
アメリカ・ユタ州で発見されたカスモサウルス亜科のケラトプス科恐竜です。
上部カンパニアンのカイパロウィッツ層から発見され、部分頭骨、
部分体骨格が発見されています。

また、カスモサウルス亜科の恐竜としては比較的珍しく、
ボーンベッドとしても標本が発見されており、恐竜のボーンベッドとしては、
カイパロウィッツ層で唯一発見されているものです。
セントロサウルス亜科の恐竜のボーンベッドに比べると規模ははるかに小さいものの、
大きさの異なる個体に由来する骨が関節の外れた状態で含まれており、
この恐竜の幼体から成体までが群れをなして生活していた可能性があります。

体長は約4.5mほどですが、頭骨は2.3mに達すると推定されます。
側方に張り出した短い目の上の角と、フリルの側方(鱗状骨(りんじょうこつ))の縁に
発達している三角形の縁後頭骨が特徴的で、最新の系統解析の結果、
同じく南方系のカスモサウルス亜科のペンタケラトプスと近縁であると考えられています。(K.C.)

コスモケラトプス

コスモケラトプス Kosmoceratops

コスモケラトプス・リチャードソナイは、ユタケラトプスと共に
アメリカ・ユタ州に分布する上部カンパニアンのカイパロウィッツ層から
産出するカスモサウルス亜科の恐竜です。

体長4m程で、ユタケラトプスよりも若干小型です。
これら2種の恐竜の産出層順の絶対年代決定の結果から、
この2種が共存していた可能性も示唆されています。
このように同じ亜科に含まれるケラトプス科が
ひとつの生態系において共存していた例は、
同時期のカナダ・アルバータ州などに見られる
北方系のケラトプシア類恐竜相ではこれまで知られていません。

形態的には、フリルの後縁からびっしりと隙間なく五対十個の縁後頭骨が
張り出しており、アルバータ州・ダイナソーパーク層から発見されている
ヴァガケラトプス・アーヴァイネンシスと近縁であることがうかがえますが、
コスモケラトプスの縁後頭骨の方がより顕著に発達し、その異様さを際立たせています。

ユタケラトプス、ナストケラトプスと同様にアルバータ州やモンタナ州の
北方系ケラトプス科動物相からは近縁種は見つかっているものの、
同種の恐竜は知られていないため、カンパニアンに北方系と南方系で
ケラトプス科動物相が異なっていることを特徴づける種です。(K.C.)


ナストケラトプス Nasutoceratops

ナストケラトプス

ナストケラトプス・タイタサイは、アメリカ・ユタ州の
上部カンパニアンにあたるカイパロウィッツ層から発見され、
2013年に記載されたばかりのセントロサウルス亜科の恐竜です。

同時期、カナダ・アルバータ州やアメリカ・モンタナ州の北方系の
ケラトプス科動物相には、すでにフリルに様々な装飾をもった派生的な
セントロサウルス亜科の恐竜(セントロサウルスやスティラコサウルス)が
出現していましたが、このナストケラトプスは、フリルの装飾が発達せず、
また目の上の角が長い、鼻の上の角が低い稜状など、原始的な形質を残しています。

このように目の上の角が長く、鼻の上の角が発達しない
基盤的なセントロサウルス亜科の恐竜としては、
他にもアヴァケラトプスやアルバータケラトプスがいますが、
これらの種は、ナストケラトプスが生息していた時代には
すでに北方系ケラトプス科動物相から姿を消していました。

ナストケラトプスの目の上の形態は非常に特異的で、通常、
ケラトプス科恐竜の目の上の角は前上方、側方、後上方の
いずれかに比較的真っすぐ伸びますが、ナストケラトプスでは、
側方に強く湾曲しながら前上方に動いています。また、内鼻孔が上下に伸び、
吻部が前後方向に短くなっているものも大きな特徴です。(K.C.)


ディアブロケラトプス Diabloceratops

ディアブロケラトプス

ディアブロケラトプス・イートナイは、アメリカ・ユタ州に分布する約8000万年前の
中部カンパニアのウォーウィーブ層から発見された保存のよい頭骨標本で知られています。
最も基盤的かつ最古のケラトプス科かつセントロサウルス亜科の恐竜です。

頭骨は成体でも長さ70cm程度で、より派生的なセントロサウルス亜科の仲間と比べると
非常に小さいです。
セントロサウルス亜科の恐竜は、進化に伴って目の上の角が短くなっていきましたが、
この原始的な種では、目の上の角がよく発達しています。

同様に原始的な特徴をもつナストケラトプスよりもさらに基盤的な種ではありますが、
フリルの後縁からは特徴的な一対の細長いスパイクが側後方に向かって伸びるという
派生的なセントロサウルス亜科の恐竜に見られる特徴もあわせもっています。

この一対の細長いスパイクが悪魔の角を思わせるため、
ディアブロ(スペイン語で悪魔の意)を冠する属名が付けられました。
後期白亜紀チューロニアンの約9000万年前のニューメキシコに生息していた
ケラトプス科の姉妹群にあたるズニケラトプス・クリストファライから、
このディアブロケラトプスまで約1000万年に渡って
ケラトプシア類の化石記録が途絶えてしまっています。
今後この空白を埋める化石の発見が、ケラトプス科の初期進化の鍵となるでしょう。(K.C.)


パキリノサウルス Pachyrhinosaurus

パキリノサウルス

これまでパキリノサウルスは、アメリカ・アラスカ州、カナダ・アルバータ州中西部、
アルバータ州南部から3種が別々に見つかっており、パキリノサウルス・ラクスタイは、
この中でも、アルバータ州中西部に分布する上部カンパニアンに相当するワピチ層の
巨大ボーンベッドから知られています。

パキリノサウルスは、目の上と鼻の上の角がなく、代わりに骨質の分厚いこぶが発達しており、
パキリノサウルス = 「分厚い鼻を持つトカゲ」の由来となっています。
このこぶは、現在のサイのように長大なケラチン質の角を支えるための
土台であった可能性が示唆されましたが、こぶの表面形態と骨組織を
現生のケラチン質の角をもつ哺乳類の頭骨と比較したところ、
サイよりもジャコウウシに類似した特徴を示したところから、サイのような長い角ではなく、
骨質のこぶを一定の厚さのケラチン質のパッドが覆っていたと考えられています。

フリルの後方には正中側に向かって伸びる一対の小さく短い突起と、
外側に伸びる一対の長い突起があります。
また、フリルの正中線に沿って1本あるいは複数のスパイクが並んでおり、
他のケラトプス科恐竜には全く見られない特徴をもっています。(K.C.)

トリケラトプス展

トリケラトプス展

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個人の趣味の範囲でしたら、右クリックでお持ち帰り頂いて結構です。
学名で検索していただけると、最新の詳しい情報が分かると思います。

本日、コロナワクチン接種してきます。様子を見て後日、続きを書く予定です。
よろしくおねがいします。
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Comments







非公開コメント
こんばんは
トリケラトプスは見方によっては
愛嬌のある姿していますね
ですが 恐竜の一族ですもの
軽く見てはいけませんね
ディアブロケラトプス
印象深い鼻をしていますね 

2021-08-25-20:57 トマトの夢3
[ 返信 ]
No Subject
トマトの夢3さんへ
コメントありがとうございました。
トリケラトプスは愛嬌のある人気のある恐竜ですね。^^
長い時間をかけて、進化していった過程が興味深く楽しかったです。
2021-08-25-21:21 らいとNGC7000
[ 返信 * 編集 ]
No Subject
体長は約4.5mほどなのに頭骨が2.3mあるとは、バランスを取るのが難しそうですね(^_^;)
恐竜についてさまざまなことが分かってきて、ますます興味を持つ方が増えるのではないかと思いました。
2021-08-26-06:43 utokyo318
[ 返信 * 編集 ]
らいとNGC7000
No Subject
utokyo318さんへ
コメントありがとうございました。
四本足で頭と体を支えますから、安定するのだろうと思います。
恐竜は現在も新種が発見され続けていますので、
これからもっと新しい事実がわかってくることでしょう。楽しみですね。^^
2021-08-26-09:37 らいとNGC7000
[ 返信 * 編集 ]
No Subject
トリケラトプスって こんなに種類が居たんですね。
言われるように 一番有名なやつ これだけだと思ってました。 いろんな顔があるんですね ^^

ワクチン接種気を付けて行ってきてくださいね
今日は早めに休んでください

  駐在おやじ
2021-08-26-13:00 駐在おやじ
[ 返信 ]
らいとNGC7000
No Subject
駐在おやじさんへ
コメントありがとうございました。
昔はトリケラトプスか、ステゴザウルスかくらいしかいません
(見つかっていない)でしたね。
近年、化石の発掘と研究が進み、一気に増えてきているところです。
これからの恐竜フィギュアは、トリケラトプス進化シリーズ♪とか
できて楽しいことになるでしょう。^^

ワクチン接種後が他の予防接種に比べてかなり痛みが残りますね。
お言葉ありがとうございます。早めに休みます。
2021-08-26-16:52 らいとNGC7000
[ 返信 * 編集 ]