ヤマトサウルス ディスカバリー展
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ヤマトサウルスディスカバリー展は、洲本市立淡路文化史料館にて
7月17日(土) ~ 8月29日(日)に開催されました。

ヤマトサウルス・イザナギイの発見された部位の説明図です。
※画像はクリックすると大きくなります。
淡路島での恐竜化石の発見
兵庫県の淡路島には、後期白亜紀の海成堆積物からなる和泉層群が分布し、
海生爬虫類や甲殻類、アンモナイトなどの産出で知られています。
2004年5月2日、化石愛好家の岸本眞五氏(姫路市在住)は、淡路島の洲本市内に
露出した和泉層群北阿万層(後期白亜紀、約7200万年前)の化石調査を行っていました。
その日は目立った成果もなく、引き上げようとした午後4時頃、岸本氏の目に異質な
化石が飛び込んできました。その化石には規則正しく歯が並び、周囲に骨の組織が
観察できました。これが淡路島で初となる恐竜化石発見の瞬間です。


同月には兵庫県立人と自然の博物館が調査を行い、追加資料を採取しました。
これらの資料は、札幌医科大学と兵庫県立人と自然の博物館の共同調査により、
ハドロサウルス科の中でもランベオサウルス亜科であると同定され、2005年に
国内外の学会で発表されました。
ハドロサウルス科とは?
ハドロサウルス科は、長く平たいカモのようなクチバシをもつ、
白亜紀で最も成功した植物食恐竜です。後期白亜紀の後半以降、
急激に多様化し、オーストラリアとインドを除く全大陸に分布域を広げました。
この高い多様性は、独特な顎や歯の構造の進化により確立された効率の良い
口内消化に起因していると考えられています。その歯の構造として、
デンタルバッテリーがあり、小さな歯が縦横に隙間なく並び、
常に新しい歯が作られていました。


新たに命名された恐竜化石
2021年4月、淡路島の恐竜化石の再研究成果が公表され、
この恐竜は他のあらゆる後期白亜紀のハドロサウルス類には見られない
2つの固有な特徴を持つことが判明しました。
1つ目は、歯の咬合面にBranchedridge(分岐稜線)と呼ばれる構造が存在しない点。
2つ目は、下顎中央部における歯列の機能歯が一本しかないことがある点。
加えて、2つの特徴(後方に向かって緩やかに広がる歯骨の結合面と歯骨の側面、
大きく腹側に面した上角骨)の組み合わせも、他のハドロサウルス類には見られません。
これらの固有な特徴と特徴の組み合わせから、淡路島産の恐竜化石は新属新種の
恐竜類であることが判明しました。

ヤマトサウルス・イザナギイ Yamatosaurus izanagii
学名の意味の説明です。
yamato:古代の日本国家を示す「倭」
saurus:爬虫類の意味
izanagi:日本神話に登場する男神「伊弉諾」
「国生み」によって日本国土が誕生したと云われていますが、
その初めの島こそがヤマトサウルスが発見された淡路島であり、
日本誕生の起源とも言えます。また、淡路島から発見された
ヤマトサウルスは、ハドロサウルス科の起源にも重要な役割を持っていることが
本研究で明らかになりました。
「淡路島」と「起源」という共通するキーワードから「伊弉諾の倭竜」という意味を持つ
「ヤマトサウルス・イザナギイ」と命名しました。

ヤマトサウルス・イザナギイの歯骨と烏口骨です。

ヤマトサウルス・イザナギイの頸椎です。

系統関係と4つの可能性
系統関係について。
ヤマトサウルスと他の恐竜との系統関係を検証したところ、
ヤマトサウルスは基盤的なハドロサウルス科と判明しました。
急激に多様化した、後期白亜紀後半以降の派生的な
ハドロサウルス科との違いは、烏口骨の上腕二頭結節が未発達であることです。
肩帯と前肢の進化が大繁栄に関連
基盤的なハドロサウルス科において、肩と前肢の進化速度が加速する
傾向が見られました。これは、ハドロサウルス科の二足歩行から
四足歩行への進化を表している可能性があり、歯や顎の構造とともに、
ハドロサウルス科の繁栄の鍵となるかもしれません。

アジア起源
ハドロサウルス科は当初、北米東部とアジアに分布していたことがわかりました。
しかし、北米東部のハドロサウルス科は一度絶滅し、ハドロサウルス科の最初の
大繁栄はアジアで生じた可能性が示唆されました。
東アジアがレフュジア
ヤマトサウルスは白亜紀末期(約7200万年前)の地層から発見されていますが、
実は最初期(約9500万年前)のハドロサウルス科の生き残りであることを
突き止めました。同様にハドロサウルス類が白亜紀末期まで生き延びた例として、
中国のタニウスやモンゴルのプレシオハドロスの存在もわかりました。
このことから、当時の東アジアは、原始的なハドロサウルス類にとって
約2千~3千万年間のレフュジア(昔のままの種が現存している地域)となる、
特異な環境であった可能性が考えられます。
東アジアにおけるハドロサウルス科の棲み分け
ヤマトサウルスは、北海道産のカムイサウルスと同じ年代の地層から発見されています。
白亜紀末の地層から基盤的なハドロサウルス科と派生的なハドロサウルス科の
両方の発見は、アジア初です。東アジア沿岸域の北部と南部で棲み分けたことで、
ヤマトサウルスのような基盤的なハドロサウルス類は白亜紀末期まで生き延びた
可能性が考えられます。

ヤマトサウルスの論文はこちら!
詳しい論文をお読みになりたい方は、ぜひQRコードからご覧ください。
淡路島の白亜紀の地層から見つかった化石を紹介します。

ウニの一種 Sea urchin

イノセラムスの一種 Inoceramus.sp.

カニの一種 Crab

ハコエビの一種 Linuparus? sp.

エビの一種 Shrimp

ザミオフィルムの一種 Zamiophyllum.sp.

アンモナイト パキディスカス・アワジエンシス Pachydiscus awajiensis
恐竜の化石についての展示は少なかったですが、
淡路産のアンモナイトは、巨大なものから中くらいのものまで、たくさん展示してありました。
大きな島、淡路島ですが、機会を作ってまた行きたいと思います。
7月17日(土) ~ 8月29日(日)に開催されました。

ヤマトサウルス・イザナギイの発見された部位の説明図です。
※画像はクリックすると大きくなります。
淡路島での恐竜化石の発見
兵庫県の淡路島には、後期白亜紀の海成堆積物からなる和泉層群が分布し、
海生爬虫類や甲殻類、アンモナイトなどの産出で知られています。
2004年5月2日、化石愛好家の岸本眞五氏(姫路市在住)は、淡路島の洲本市内に
露出した和泉層群北阿万層(後期白亜紀、約7200万年前)の化石調査を行っていました。
その日は目立った成果もなく、引き上げようとした午後4時頃、岸本氏の目に異質な
化石が飛び込んできました。その化石には規則正しく歯が並び、周囲に骨の組織が
観察できました。これが淡路島で初となる恐竜化石発見の瞬間です。


同月には兵庫県立人と自然の博物館が調査を行い、追加資料を採取しました。
これらの資料は、札幌医科大学と兵庫県立人と自然の博物館の共同調査により、
ハドロサウルス科の中でもランベオサウルス亜科であると同定され、2005年に
国内外の学会で発表されました。
ハドロサウルス科とは?
ハドロサウルス科は、長く平たいカモのようなクチバシをもつ、
白亜紀で最も成功した植物食恐竜です。後期白亜紀の後半以降、
急激に多様化し、オーストラリアとインドを除く全大陸に分布域を広げました。
この高い多様性は、独特な顎や歯の構造の進化により確立された効率の良い
口内消化に起因していると考えられています。その歯の構造として、
デンタルバッテリーがあり、小さな歯が縦横に隙間なく並び、
常に新しい歯が作られていました。


新たに命名された恐竜化石
2021年4月、淡路島の恐竜化石の再研究成果が公表され、
この恐竜は他のあらゆる後期白亜紀のハドロサウルス類には見られない
2つの固有な特徴を持つことが判明しました。
1つ目は、歯の咬合面にBranchedridge(分岐稜線)と呼ばれる構造が存在しない点。
2つ目は、下顎中央部における歯列の機能歯が一本しかないことがある点。
加えて、2つの特徴(後方に向かって緩やかに広がる歯骨の結合面と歯骨の側面、
大きく腹側に面した上角骨)の組み合わせも、他のハドロサウルス類には見られません。
これらの固有な特徴と特徴の組み合わせから、淡路島産の恐竜化石は新属新種の
恐竜類であることが判明しました。

ヤマトサウルス・イザナギイ Yamatosaurus izanagii
学名の意味の説明です。
yamato:古代の日本国家を示す「倭」
saurus:爬虫類の意味
izanagi:日本神話に登場する男神「伊弉諾」
「国生み」によって日本国土が誕生したと云われていますが、
その初めの島こそがヤマトサウルスが発見された淡路島であり、
日本誕生の起源とも言えます。また、淡路島から発見された
ヤマトサウルスは、ハドロサウルス科の起源にも重要な役割を持っていることが
本研究で明らかになりました。
「淡路島」と「起源」という共通するキーワードから「伊弉諾の倭竜」という意味を持つ
「ヤマトサウルス・イザナギイ」と命名しました。

ヤマトサウルス・イザナギイの歯骨と烏口骨です。

ヤマトサウルス・イザナギイの頸椎です。

系統関係と4つの可能性
系統関係について。
ヤマトサウルスと他の恐竜との系統関係を検証したところ、
ヤマトサウルスは基盤的なハドロサウルス科と判明しました。
急激に多様化した、後期白亜紀後半以降の派生的な
ハドロサウルス科との違いは、烏口骨の上腕二頭結節が未発達であることです。
肩帯と前肢の進化が大繁栄に関連
基盤的なハドロサウルス科において、肩と前肢の進化速度が加速する
傾向が見られました。これは、ハドロサウルス科の二足歩行から
四足歩行への進化を表している可能性があり、歯や顎の構造とともに、
ハドロサウルス科の繁栄の鍵となるかもしれません。

アジア起源
ハドロサウルス科は当初、北米東部とアジアに分布していたことがわかりました。
しかし、北米東部のハドロサウルス科は一度絶滅し、ハドロサウルス科の最初の
大繁栄はアジアで生じた可能性が示唆されました。
東アジアがレフュジア
ヤマトサウルスは白亜紀末期(約7200万年前)の地層から発見されていますが、
実は最初期(約9500万年前)のハドロサウルス科の生き残りであることを
突き止めました。同様にハドロサウルス類が白亜紀末期まで生き延びた例として、
中国のタニウスやモンゴルのプレシオハドロスの存在もわかりました。
このことから、当時の東アジアは、原始的なハドロサウルス類にとって
約2千~3千万年間のレフュジア(昔のままの種が現存している地域)となる、
特異な環境であった可能性が考えられます。
東アジアにおけるハドロサウルス科の棲み分け
ヤマトサウルスは、北海道産のカムイサウルスと同じ年代の地層から発見されています。
白亜紀末の地層から基盤的なハドロサウルス科と派生的なハドロサウルス科の
両方の発見は、アジア初です。東アジア沿岸域の北部と南部で棲み分けたことで、
ヤマトサウルスのような基盤的なハドロサウルス類は白亜紀末期まで生き延びた
可能性が考えられます。

ヤマトサウルスの論文はこちら!
詳しい論文をお読みになりたい方は、ぜひQRコードからご覧ください。
淡路島の白亜紀の地層から見つかった化石を紹介します。

ウニの一種 Sea urchin

イノセラムスの一種 Inoceramus.sp.

カニの一種 Crab

ハコエビの一種 Linuparus? sp.

エビの一種 Shrimp

ザミオフィルムの一種 Zamiophyllum.sp.

アンモナイト パキディスカス・アワジエンシス Pachydiscus awajiensis
恐竜の化石についての展示は少なかったですが、
淡路産のアンモナイトは、巨大なものから中くらいのものまで、たくさん展示してありました。
大きな島、淡路島ですが、機会を作ってまた行きたいと思います。
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[Tag] * ヤマトサウルス・イザナギイ
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コメントありがとうございました。
コロナ禍がおさまった後の恐竜の展示会に期待します。
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