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親ガチャという不平等 2

朝日新聞 親ガチャという不平等 耕論

「頑張れば」は呪いの言葉

五十嵐衣里さん 東京都議会議員・弁護士
https://igarashi-eri.com/
1984年生まれ。大学の夜間主コースなどで学び、
30歳で司法試験に合格。2021年に都議会議員初当選。

いまの日本は、生まれた家庭次第で人生が左右されてしまう「親ガチャ社会」になっている、と感じます。親の価値観で「女の子は大学に進学する必要はない」と決められてしまったり、親が子どもの将来に無関心だったりするケースを見てきたからです。世態年収の違いで、子どもの学力に差が出ているという調査結果もあります。

私は、静岡県内の中学を卒業してすぐ社会人になりましたが、「親ガチャ」に外れたというわけではありません。中学のとき、いじめに遭い、不登校になりました。進学して同じ憂き目にあうくらいなら、早く自立したいと思ったんです。スーパーのレジ打ちやレストラン、トラックの運転手……、様々な職を転々としました。学歴も、お金もなく、苦しい毎日でした。

国営明石海峡公園

そんなある日、突然、勤め先をクビになりました。労働基準監督署に相談すると、担当者が会社に指摘してくれて、解雇予告手当を受け取ることができました。私が言うのと、立場のある人が言うのでは、会社の対応が違いました。それから法律の勉強を始め、大学の夜間主コースや大学院に進み、司法試験に合格しました。大学の同級生に、両親が外国籍の友人がいました。私より何倍も優秀でしたが、家にお金がなかった。彼はいつもいい点数をとっていたのに、大学院に進んで司法試験を受けるという選択肢がありませんでした。

自分の置かれた境遇を嘆く人に対し、「頑張れば成功できる」と説く人はたくさんいます。私はこの言葉は「呪いの言葉」だと思っています。貧困を生んでいるのは政治や社会なのに、個人に責任を押し付けているからです。私はたまたま勉強が苦でなく、勉強できる環境も整っていました。でも、環境が整っていない人や、何を頑張ればいいかわからない人もいます。そんな人たちにも、あきらめを強要する言葉です。「なぜ頑張れないのか」「なぜ勉強していい大学に行かないのか」……。こんな風に、上から目線で、個人に努力を強いる政治家がいるのも事実です。国会議員のほとんどは大卒者。裕福な家庭に生まれ、勉強ができる人が多い。二世や三世議員も多い。環境に恵まれているという前提を自覚しつつも、努力して高学歴を得たから、人の上に立つのにふさわしいと思っているのでしょう。

国営明石海峡公園

政治の役割は家庭に恵まれなかった人のために環境を整えることです。必要な知識や技術を身につける学びの場を増やし、金銭的支援もする。多様な経歴や背景を持つ人たちが政治に関わり、それぞれの視点で支援策を提案していければ、「親ガチャ社会」を変えられるはずです。(聞き手・富田洸平)

国営明石海峡公園 コスモス

写真は、淡路島国営明石海峡公園で撮影しました。
次回へ続きます。
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