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ミロコマチコ いきものたちはわたしのかがみ 3

ミロコマチコ展の続き、最終回です。

ミロコマチコ展

「ある日、森の中」

伊佐領は、小国町と飯豊町の山間にある小さな町。川の崖沿いに自宅を構えている。栗やかぼちゃを目当てに熊が降りてくるので、猟師の格好をしたかかしを作ったり、発砲スチロールを黒く塗った大きな熊なんかで威嚇をする風景をよく見る。熊はかかしだと悟って警戒しなくなるから、時々位置を代えたり工夫しなきゃいけない。向かいにある川を泳いでいくのもよく見た。泳ぎもとてもうまいものだ。

熊はとても賢い生き物だと、私たちは地域がら、家族から聞かされて記憶していく。

森林調査の仕事をしていた2、3年前のお話。森を分け入って歩いていると、
15メートルくらい先に、ばったり熊の子と出くわした。子熊は1メートルくらいの大きさで、
木の根っこに前足をかけてこちらをじっ…と見ている。小熊には母熊がつきもの。
間違いなく近くにいる筈。とても緊張した。

普通、人間に気付けば、母熊が子熊に逃げろという合図を出すので、
子熊が動いても良さそうなものだが、どういうわけか逃げない。
やさしい目をしてじっとこちらを見ている。おかしな動きをしないよう、
子熊の方から目をそらさないままゆっくり後ずさりをして、
時間をかけてその場を離れた。だいぶ距離をとった後も、
子熊はしばらくこちらを見ていたのが印象的だった。
あちらからは、こちらはどんな風に見えていたんだろうか。

ミロコマチコ展

「不思議な生き物」

あれはなんだろう。初めて見る生き物だ。ヘビだろうか。
でもヘビにしては大きいし、立っている。かすかな匂い。
どこかで嗅いだ事のある匂い。
ああそうだ。トウキビだ。またぼくトウキビ食べたいな。
山を下りるとおいしい食べ物いっぱいあるんだ。
かぼちゃ、スイカ、栗、なかでもぼくはトウキビが一番好き。
コリコリコリコリぐるりだけ食べる。
そんなことを考えていたら不思議な生き物はゆっくり後ずさりして
去って行った。あれはトウキビの神様だったかもしれないな。

ミロコマチコ展

「人間との格闘」

すっかり暖かくなって虫がたくさん騒ぐ季節になった。
ぼくは虫を追いかけて遊ぶのを楽しみにしていたから
暖かい季節がすきだった。お母さんの側にいれば、
虫と騒いだいても怒られなかった。

だけどある日、とても高く飛べる虫がいて夢中で追いかけて走りすぎた。
はっと気付くとお母さんがいない。急に不安になった。近くでガザガザと
音がしたのでお母さんだと思って安心したら、ちがった。
ボクは凍り付いてしまった。それは一匹の犬と人間がふたりだった。
どうしよう動けないと思っていると大きなカゲがとんできて、犬がぶわっと
空中にほうり出された。激しくキャンキャン泣き叫ぶ犬。お母さんだった。

人間は大きな木でなぐりかかってきた。
お母さんのお腹に石をぶつけたりもした。
人間たちがひるんだスキにぼくたちは逃げた。
あとでお母さんのお腹をみただうっすら血がにじんでいた。
全然平気というお母さんは優しくて、ぼくは悲しくて、それから
暖かい季節がくるたびにぼくは切ない気持ちになった。

ミロコマチコ展

「コウモリの寝床」

宮城県北部にある大崎市古川。
その中心部には古くから緒絶川という川が流れている。
商店街の裏側を流れるその川は、かつては生活用水として利用され、
庶民の交流の場として親しまれていた。
「今では綺麗にコンクリートで塗り固められてしまったけどね。
今から60年くらい前。私が子供だった頃は川の側面には
石が積み重ねられていたんだよ」
織絶川の幅は狭く、底からの高さは低い。
当時、傍にはうなぎ屋があって、川の水を利用した生け簀があった。
「うなぎは高級品だったからね。でも夏になると庶民だって食べたくなるわけだ。
そういう大人たちが川に入って、石の隙間に仕掛けを入れて釣りをしているんだ。

これが見たくてね。小学校が終ると走って川に行って、パンツ一丁になって
入ったものだよ」縫い針の中央に糸を付け、ぶつ切りにした太いミミズに
突き刺して仕掛けを作る。竹の先にミミズの付いた張りを縦に取り付け、
川の壁面に積み重ねられた石の隙間に差し込むという仕組み。
うなぎがミミズを食べ始め、飲み込んだところで糸を引くと、
針が縦から横向きになり喉に引っかかる。
「うなぎは結構貪欲なんだよ。仕掛けにかかったうなぎが親父たちに
引っ張られて、ぬるっと石の隙間から出てくる姿が面白くてね。
暗くなるまで川の中にいたものだ」

川へと集まった子どもたちは夕方になると家路を急ぐ。
「日が暮れると織絶川の上空はコウモリで真っ黒になるんだよ。
コウモリの飛び方って鳥と違って不気味だからね。子ども心に
気味が悪くて早く家に帰りたくなるんだ」
何故たくさんのコウモリが、夕方になると織絶川に現れるのか。
初夏の頃にはわからなかったけれども、川に入るようになってからその謎が解けた。

「織絶川には橋がかかっていて、その下にびっしりと逆さまになった
コウモリがぶら下がっていたんだ。コウモリたちの寝床だったんだよね」
普段はうなぎ捕りに夢中の子どもたちも、釣れない時は飽きてしまう。
「コウモリって小刻みに震えているの。気持ち悪いなぁと思いながらも
子どもだからね。ついつい気になってしまうわけ。
気づいたら触ってしまったことがあったんだ。
ビロードみたいな感触で冷たくてね。思わず「うわぁ~」って
大きな声を出してしまったよ。驚いたコウモリが何匹か飛んでいったけな」
昼間に飛んだコウモリはゆらゆらと弱々しく見えた。

ミロコマチコ展

「ぼくの夢」

ぼくの夢。それは橋の下で暮らすこと。
橋の下には川が流れていてとてもキレイな石があるらしい。
この間、橋の下で暮らしている友達がお土産にくれた。
こんなキレイな石を僕は見たことがない。今年の春にはいとこの
お姉ちゃんも橋の下へ引っ越して、全然帰ってこなくなった。
きっと素晴らしい場所なんだ。
ぼくだってもうになったんだから、勇気を出して森を出よう。
お父さんとお母さんは橋がある町の方は危険だって、心配しているけど、
洞窟の中はもう飽き飽きだ。
夜、ついにぼくは家を出た。友達に教えてもらっているから場所は分かっている。
朝までには着くだろう。

途中、初めて人間も見た。大きくて長細い。ぺちゃくちゃおしゃべりをしている。
明るくピカピカした町を抜けると仲間の声が聞こえてきた。
「押すな押すな」「今オレの足を踏んだだろ」「ちょっと場所取りすぎなんじゃないの」
見るとそこは一面びっしりのコウモリ達だった。見たことのない、
おびただしい数のコウモリ、コウモリ、コウモリ。
ぼくは恐る恐る尋ねてみた。
「あのー、ここは橋の下ですか。」
近くにいた眠そうな女性が答えた。
「そうよ、あなたは新入り?」
どうやら着いたみたいだが、どう見てもぼくの入る隙間がなさそうだ。
だけど意を決して体を押し込んでみた。
すると、「おい、誰だ!ここはオレの場所だぞ」と怒鳴られた。
すぐ横へ移動してみると「ちょっと私の部屋に入ってこないで!」と怒られる。

よく聞いてみると、みんな文句を言い合って仲が悪そうだ。
みんながブルブルと震えながら自分の場所を守っている。
こんなところじゃ、ちっとも眠ることができそうもない。
ぼくは友達を探すことも諦めて橋の下を出ることにした。
と、飛んだ瞬間、生暖かいヌルっとしたものが触った。人間だ。
びっくりして慌てて高く飛んだけど、すっかり太陽が昇っていて、
眩しくてうまく飛べない。だけど、ぼくはもう一刻も早く
森の洞窟へと帰りたかった。あの少し湿ったゆったりした場所で
のんびり眠りたかった。ゆらゆらと弱々しく飛びながら、
キレイな石を取ってこなかったことを後悔した。

ミロコマチコ展

ウサギの絵、載せ忘れておりました。
じっくりと時間をかけて描かれていると思いました。
絵はもっと上手な人はいるかもしれませんが、目の前で見て観察していると、
びっしりと緻密に描かれているので、だんだん惹かれてきます。
味わいのある方です。

ミロコマチコ展

グッズ類のネーミングが、シュールです。

ミロコマチコ展

ミロコマチコ展

ミロコマチコ展

絵本もたくさんの種類が並んでいました。
どうもありがとうございました。
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Comments







非公開コメント
No Subject
おはようございます。
けっこう引き込まれてしまいますね・・
今地球はかがみになってるってことになりますね。
2022-01-11-09:04 世捨て人
[ 返信 * 編集 ]
No Subject
おはようございます。

コウモリがとても印象的でした。珍しいからかな。

近くなら行ってみたいと思いました。グッズが欲しくなるかも笑
2022-01-11-10:37 どらねこ
[ 返信 ]
No Subject
良いところですね ^^
いい話だし
子供のころに こういう話をたくさん聞いていると 大きくなって 人や動物とのかかわり方が変わってくるかもしれませんね。
人間を初めて見た 小熊^^
向こうからしても なんだ? ってなるでしょうね

最近 よく熊に出くわして 事故になるというニュースをよく見ますが、 難しい話ですよね・・・・・

  駐在おやじ
2022-01-11-10:39 駐在おやじ
[ 返信 ]
No Subject
世捨て人さんへ

コメントありがとうございました。
ミロコマチコさんの作品を見ていると、
強い想いとメッセージが伝わってくるように感じました。
もちろん自由に色々なことを思ってもらって良いのですけれど、
これまでの人間と動物の関係を顧みて、地球はこれでいいの?
これからの私たちの生活をどうしたいの?
と問われているような気がしました。
人間社会においては相手側の気持ちを、動物との関係では、
立場を変えて考えたらどうなるのか、
を意識してよく考えていきたいと思います。
2022-01-11-13:28 らいとNGC7000
[ 返信 * 編集 ]
No Subject
どらねこさんへ

コメントありがとうございました。
コウモリの生態について、詳しく知る人はあまりいないと思います。
人の目の届かない洞窟や森の中で、超音波を道具として生活している
彼らは謎が多いです。
もしかすると生態系の中で重要な役割を持っているのかもしれません。
グッズは … (・∀・;) 山ほど種類がございました。
またの機会、目にする機会がきっとあると思います。
2022-01-11-13:31 らいとNGC7000
[ 返信 * 編集 ]
No Subject
駐在おやじさんへ

コメントありがとうございました。
情操教育は大切ですね。
絵本を読み聞かせることがつながるかどうかはわかりませんが、
私個人の考えは、幼い頃に読む機会があればどんどん読める環境を
作ってあげると良いと思います。
熊が人間に見つかって殺されているということは
事実だけ見ると悲しく痛ましいことです。
人間の活動する範囲と熊の活動する範囲が重なると、熊の方もびっくりします。
何とか遭遇をできるだけ避けて、熊には生きていて欲しいと願うのですが、
私自身は熊と会うことのない町に住んでいますので、何とも強くは言えません。
熊の餌になるものが毎年豊作だと良いのですけれどね。
2022-01-11-13:37 らいとNGC7000
[ 返信 * 編集 ]
こんにちは!

名前がなんというか感性の豊かな方がつけたんだろうなぁ~って感じですね。
見たまましか表現できない私にはできないことでないものねだりですが羨ましいです
2022-01-11-13:37 tkmtrip
[ 返信 ]
近くで開催でしたら
ゆ~っくり向き合ってみたいです・・・

今の私たちと 動物との関係には
時々 切なくなります・・・!

決められた広さの地球なのに
人間だけが幅を利かせて人間のための住み分けを
広げてしまい・・・

熊 猿 猪 鹿
みんな人里離れた自分たちの居場所確保していた筈なのに
今共存関係崩壊しております!
もちろん
温暖化の影響で 動物の餌が充分に行き渡らない現実もありますが
その温暖化も人間が作り出してしまった現実です。。。

動物たち餌を求めて人里 町に出没等しようものなら多くの場合 死!
特に 大きな熊などは・・・

野生動物が
今 快適に過ごす事が出来ないと言う事
これからの私たちが向かう世界なのでは・・・と感じます。

とても素晴らしい企画展☆
たくさんの方がそれぞれの受け止め方で
向き合う時間を持てたら良いですね☆

今日もお元気願っております☆

2022-01-11-14:33 田舎のオ-ドリ-
[ 返信 * 編集 ]
No Subject
tkmtripさんへ

コメントありがとうございました。
動物を課題に集中して根気よく描いているところが迫力がありましたよ。
背景も手を抜かず、細かい作業を続けて仕上げています。
現在も次の作品を作り続けているかもしれませんね。
楽しみです。^^
2022-01-11-17:39 らいとNGC7000
[ 返信 * 編集 ]
No Subject
田舎のオードリーさんへ

コメントありがとうございました。
動物との共存という考え方も動物からしたら
人間中心な物言いで良くは受け止められませんね。
山を切り開いて大豆畑やコーヒー園を増やし続けることが、
果たして許されることなのか。本を読んで以来、いつも気になります。
便利で裕福な環境の陰には、犠牲になる存在があります。

ミロコマチコさんのお考えがどうであるのかは、
作品から伝わってくるように感じました。
決して自然の動物と敵対するようなことを望んでいないと思います。
人間が増えすぎているのが根本的な原因だと私は思うのですが、
持続的何たらというよりも、抜本的に見直しが必要だと思いますね。
限られた地球の中で、無理なものは無理、だめなものはだめと
はっきり言える社会にならなければと思います。
火星や月には人は住めませんからね。

はい。今日も充実した一日を送りましょう。
2022-01-11-17:48 らいとNGC7000
[ 返信 * 編集 ]
らいとNGC7000さん、こんばんは
とても面白い物語でした。
人間は自分の都合だけで生きている、
邪魔者なんでしょうか?
人間は自分のいるべき場所を捨てて
苦労を重ねているんでしょうか?
そんなことを感じました。
2022-01-11-19:05 GEN
[ 返信 ]
No Subject
こんばんは
気づけばすごく集中して読ませていただいてました
記事にしてくださってありがとうございます
2022-01-11-19:06 祐希
[ 返信 * 編集 ]
No Subject
GENさんへ

コメントありがとうございました。
なるほどそういう受け止め方をする人もいらっしゃるのですね。
例えば、生活の糧や本拠地を持つ人は、
現在の生活を脅かされることをおそれるのだと思います。
自然、動物と対立でもしようものなら大問題ですから、
対立する前に相手を叩く行動をするでしょう。

邪魔者ではありませんが、元々いたものを追い出して除外して征服してきたのは人間の方です。
必要な分だけを自然から受け取るようにするのが持続可能につながるのだと思います。
林業がふるわない中、植林活動を続けるのは将来の環境を守るためです。
我儘に破壊し続けると、とんでもないしっぺ返しに遭うかもしれません。
苦労を重ねているかどうかは、人の意識にもよりますが、
日頃から追い立てられた競争を強いられ続けている一部の人達は、
はた目から見ると苦労しているようにも見えますね。
自然体という言葉のように生きるのが心にも良いと私は思います。
2022-01-11-21:02 らいとNGC7000
[ 返信 * 編集 ]
No Subject
祐希さんへ

コメントありがとうございました。
作者のミロコマチコさんの伝えたいこと、感じることは、
自由に受け取って良いと思います。
考えるきっかけになると、ミロコマチコさんも喜ぶのではないでしょうか。
自分を見つめたり、社会のことだったり。
私は絵本が好きですが、興味深い作品だと思います。
2022-01-11-21:06 らいとNGC7000
[ 返信 * 編集 ]
こんばんは
ミロコマチコさんのお人柄が伝わって来るようです
中でも コウモリの寝床は興味深く
拝見いたしました
2022-01-11-21:55 トマトの夢3
[ 返信 ]
No Subject
トマトの夢3さんへ

コメントありがとうございました。
作品に対する熱い気持が伝わってきますね。
コウモリの寝床も、確かにそうなんですけれど、惹かれるものがありますね。
ミロコマチコさんはきっとこれからも活躍される方だと思います。
2022-01-11-22:02 らいとNGC7000
[ 返信 * 編集 ]