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日銀の口封じ

ヒメムラサキハナナ

2月2日の朝日新聞の朝刊に、記者が渾身の力を注いで伝えたい文章が掲載されていました。
編集委員の原真人記者です。文章を載せます。

日銀の口封じ たかが記者会見、されど。

記者稼業を長年続けていると出席した記者会見の数は千回や2千回を軽く超える。その経験から言えるのは会見には2種類あるということだ。一つは「伝えたい何か」を出来るだけ多くの人に伝えるための会見。もう一つは「隠したい何か」をできるだけ話さず、ただやり過ごす会見である。昨今は後者が増えている。モリカケ、桜を見る会などの疑惑に揺れた安倍政権、ワクチン接種など新型コロナ対策の遅れを批判された菅政権がそうだ。想定問答をひたすら読み上げ、批判的な質問をする記者を排し、時間が来たらさっさと打ち切る。私がふだん出席する日本銀行の会見もそうだ。先月開かれた定例会見で黒田東彦総裁は14人の記者の質問に答えた後、最後にひとり挙手する私だけ指名せず会場をあとにした。会見の司会は記者会見側があるが質問者を指名する裁量は総裁にある。

マラコイデス

私が質問の機会を奪われたのはこれが初めてではない。以前から私を含め、異次元金融緩和について厳しい質問をぶつけたり批判的な記事を書いたりする何人かの記者が指名されないことがたびたびあった。2年前、私は抗議をこめて強引に総裁に質問した。日銀が2016年に定例会見を年14回から8回に減らす際、総裁はあらゆる面で透明性を充実させ説明責任は後退させないと公約した。それが守られていないのではないかと。その後、質問封じは影をひそめていたが、日銀の出口戦略の無策に懸念が高まるなかで2年ぶりに復活した。

マラコイデス

たかが日銀会見の話と思わないでいただきたい。黒田体制の9年間で日銀は政府の借金のうち400兆円を事実上肩代わりし株式市場に30兆円超のマネーを投じた。国家の未来を脅かしかねない異様な政策はわずか9人の政策決定会メンバーで決められた。その権力の中心が日銀総裁なのだ。

たかが一問でもなかろう。権力を批判する一つの質問の制限が全体を委縮させる。朝日新聞社史は戦前戦中の朝日報道を「大きな汚点」と記している。戦争を批判せず軍部に協力して国民の戦意をあおり、実態と異なる戦況報告を垂れ流した。戦後はそれを猛省し、二度と同じ過ちを繰り返すまいと社をあげて誓った。その精神は私たち現役記者にも引き継がれている。

とはいえ将来、国家権力が再び戦争に突入しようとしたとき、メディアはそれを止められるだろうか。私には自信がない。権力が手を下すかもしれない検閲や報道統制、記者の逮捕や暴力的圧迫のもとで批判的報道がどこまで続けられるものか。

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昨秋、ロシアとフィリピンの2人のジャーナリストがノーベル平和賞を受賞した。同僚記者が何人も殺されたり、自身が不当に逮捕されたりという弾圧のなかで強権政治への批判報道を続けている。その覚悟はいかばかりかと思う。称賛に値する。ただ、いまも命を脅かされ封じ込められる彼らの悲惨な状況をみれば、強権政治が生まれてしまった後ではもはや手遅れだとも思わされる。そうなるずっと手前でなんとかその芽を摘み取れなかったか。

中国やミャンマーのような他の強権政治の国でも政権批判や抗議デモは命がけの行為だ。世界の現実は批判する自由がいかに貴重で、いかにもろいかを教えてくれる。記者会見での批判的質問の可否はいわば民主主義のリトマス試験紙のようなものだ。岸田政権になって官邸会見はずいぶんソフトになった。一昨年まで新聞労連委員長として官邸会見のあり方を批判してきた南彰記者(朝日新聞政治部)はそれでも「まだ油断はできない」と言う。「安部・菅両政権時代にできた不都合な記者を排除する仕組そのものがまあ残っている。今後も政権に悪用される危険性はある」

たかが記者会見、たかが一問。されど権力批判する自由はジャーナリズムの最後のとりでである。守る覚悟を持ち続けたい。

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大きな権力に対して立ち向かい、批判する記事を書くことは勇気のいることです。
私は気概を持つ記者が、真剣に考え抜いて記事を書くのでしたら、
これからも新聞の購読を続けようと思います。
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Comments







非公開コメント
No Subject
記者クラブの存在自体が悪しき伝統なので、
真実が報道されるかどうか。

権力批判の無い最近の報道は、
「政府の広報部」のような気がします。
2022-02-06-14:48 万葉
[ 返信 * 編集 ]
No Subject
万葉さんへ

コメントありがとうございました。
おっしゃる通りだと思いました。
国民はいつも真実が知りたいのです。
それがたとえ不都合なことであったとしても、
言葉を尽くして説明する責任があるはずです。
もちろん、何でも批判すれば良いというものではありません。
国民が甘い言葉に騙されかけている時にこそ、
マスコミが警笛を鳴らすべきです。
それをせずに、マスコミが時の政府に迎合しだしたら終わりですね。
2022-02-06-15:10 らいとNGC7000
[ 返信 * 編集 ]